クスノハガシワは日本の琉球地方から熱帯アジア、オーストラリアに分布する小高木です。日本では同じ仲間に、本州の山野に普通に見られるアカメガシワと、琉球地方に分布するウラジロアカメガシワがあります。この他に約140種が世界中の熱帯に分布します。クスノハガシワはアカメガシワと異なり新芽は赤くなりませんが、若い枝や葉柄は褐色の毛に覆われています。
クスノハガシワは雌雄異株で、当館には雌株が育っています。花序は茎の先端に着き、花弁が無く、雌しべだけがあります。雌しべの柱頭は3から4個あります。クスノハガシワの果実の表面には赤い繊毛が生えており、これを集めて「カマラ」と呼ばれる染料にします。また、下剤、家畜の駆虫薬として使われます。
クスノハガシワは学名の「philippensis(フィリピンの)」が示すように熱帯の植物なので長い間温室の中で育てていましたが、2007年に屋外に地植えしたところ半年で開花しました。先々月のネコノツメといい、先月のヒメツバキといい、熱帯原産や沖縄に分布する植物の多くが意外にも京都の屋外で越冬し、そのうえ花まで咲かせるのです。植物の生命力の強さに感心する一方で、栽培者としては狭い温室に並べなくても済むので大助かりでもあります。
カマラ (クスノハガシワの果実の毛)