今回紹介するのはオーストラリアで絶滅危惧植物に指定されているエウポマティア・ベンネッティイです。この植物が所属するエウポマティア科は単型科で2~3種しか知られていない小さな科です。同属のエウポマティア・ラウリナはニューギニアからオーストラリアにかけての熱帯雨林の林床に生育し、樹高は数㍍になる、かなりありふれた植物です。一方、エウポマティア・ベンネッティイはオーストラリアのクイーンズランド州からニューサウスウェールズ州の沿海地帯の林床に生育する樹高数十㌢の矮性低木です。現在私が育生しているエウポマティア・ベンネッティイは発芽後5年7か月で樹高15㌢で、幹の直径は4㍉しかありません。灌水の時、如雨露が当たると幹が折れそうなので、注意しながら水遣りをしています。しかも直射日光に曝されると葉身が褐変化して直ぐに脱落する弱々しい植物です。葉は単葉、全縁で互生し托葉はありません。葉身は数㌢から約10㌢で葉柄はほとんどありません。
この植物の特徴の一つはカリプトラ(キャップ)をもつことです。カリプトラが脱落して開花すると、不稔の花弁化した雄しべの外側に稔性のある雄しべがあるために、花弁の外側に雄しべが存在する奇妙な植物に見えます。残念ながら当館では、まだ一度も開花したことがないので花の写真をお見せすることができません。いつの日にか開花しましたら、再度この植物を紹介したいと考えています。
* カリプトラ(calyptra)=花被片が合着して花部を包み帽子状なるもの