当館では、シキミ属植物はシキミ(Illicium anisatum)、トウシキミ(I.verum)と並んで、このキョウヨウウイキョウ(狭葉茴香)の3種を展示しています。
シキミは日本に自生して仏事に使われ、また毒性物質のアニサシンなどを含むため毒草である事で有名です。一方トウシキミは中国南部原産で東南アジアからインド南部まで栽培され、その果実は香辛料の「八角」としてよく知られており、別名「大茴香(ダイウイキョウ)」ともよびます。
今回とりあげた同じシキミ属の狭葉茴香は、中国南部の山地に分布する常緑の亜高木で、樹高は8mにもなります。樹皮は灰褐色で、葉は互生し、ときに輪生状に付くこともあります。革質の葉は全縁で、長さ5~15cm、幅1.5~4cm程度、倒披針形で先端は尖っていて基部は楔形、葉柄は0.5~1cm程度になります。名前はトウシキミより幅が狭い葉を持つという意味と思われますが、その通りやや幅が狭く尖っているように見えます。
特徴的なのは花の色で、鮮やかな紅色の花が咲きます。5~6月ごろ葉腋から花柄を伸ばして単生あるいは2~3個が付きます。花披片(花弁)の形態はトウシキミに似ていますがより大型でよく開くので花芯の部分がよく見えます。
中国では、根を打撲傷や腫脹、腰痛やリウマチの痛みに内服したり外用したりして利用するそうですが、「紅茴香根」と称しているのも花の色に因んでいると思われます。葉も「紅茴香葉」といわれます。また葉は「莽草(モウソウ)」ともいい、外傷出血、腫れ物、瘰癧、皮膚病や歯痛に利用できることが知られますが、毒性が強いために内用は禁じられています。
果実はシキミや八角と同様に放射状の果実になるようですが、シキミの果実にも含まれるHananominという毒性物質が含まれることが知られています。当館ではシキミ、トウシキミ共に露地で開花・結実しますが、本植物はまだ結実を見ませんので、結実すれば三者を比較したいものだと思っています。