ノコギリパルメット(ノコギリヤシ)は北アメリカのサウスカロライナ州南部からテキサス州までの大西洋およびカリブ海沿岸に分布しています。分布域からは京都でも問題なく生育する筈ですが、植え付けた当初は冬の寒さで葉や新芽が傷んだことから、現在は毎冬にビニールの覆いをしています。小形のヤシで葉の先端までの高さは2mくらい、地下で分枝して群落をつくります。株の一つ一つは、よく見られるシュロの背丈を縮めたような姿をしていて、短い幹は葉鞘の繊維に覆われています。葉は掌状で葉身は直径50cmくらいの大きさです。葉柄の縁には細かな刺があり、ノコギリのようになっています。
ノコギリパルメットの花序は先端近くの葉腋につきます。今回初めて花がつきました。おそらくこれから伸びてくるのだとは思いますが、執筆時点では半分ほどが葉鞘に隠れたままです。花は白色で直径約1cmの大きさがあり、6枚の花被片、雄しべがあります。果実は黒色で直径1~2cmの洋ナシ型をしています。
ノコギリパルメットは原住民に多く利用されています。茎の根元部分は生で食べられます。果実も食べられ、種子もマメと同じように食するという記録があります。また茎や葉でカゴを編んだり、ロープを作ったりしました。一般には薬用として有名で、原住民は果実エキスを尿路の不定愁訴に対する治療に、また去痰薬、防腐剤として用いました。ノコギリパルメットの作用は様々に研究されており、抗アンドロゲン活性、抗エストロゲン活性、抗細胞増殖作用、抗炎症作用があることが知られています。ヨーロッパでは良性前立腺肥大による症状の管理にノコギリパルメットが用いられています。