ヨモギは、本州から九州、小笠原諸島、朝鮮半島に広く分布して、私たちの身の回りでも普通に見られる多年草草本です。
若葉を草もちや和えものを作るのに利用し、葉の裏の綿毛をお灸に使う艾(もぐさ)として加工することでも知られています。また出血の際の民間薬としてもよく利用されてきた植物です。
春先に前年の株の基部や根茎の先端から出芽し、若葉を出します。葉は互生して長さ6~12cm、幅4~8cm程度になり、深く羽状に2~3回分裂して上にいくほど小型になります。
草丈は60~150cmほどにもなって、9月から10月に円錐形の花序を伸ばして直径1.5mmほどの頭花を多数つけます。若葉の頃になじみのある方でも花穂が伸びる秋の頃はずいぶん大きくなるので気がつかない方が結構おられます。
葉は特有の香りを持っていますが、シネオール、ツヨン、β-カリオフィレン、ボルネオール、カンファーなどの精油成分を含むほか、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪酸や、タンニン、コリン、アデニンや多くのビタミン類が含有されています。
葉を乾燥した生薬をガイヨウ(艾葉)といい、体を温めて止血の効があり、冷えによる腰痛、腹痛、生理不順、婦人の帯下、吐血・下血などにも利用されます。
また食欲増進、胆汁分泌促進の効用もあるとされています。漢方では、芎帰膠艾湯(きゅうきこうがいとう)や柏葉湯(はくようとう)などの処方に配合されています。
ガイヨウは第16改正日本薬局方第一追補で局方にも収載され、「本品はヨモギArtemisia princeps Pampanini又はオオヨモギArtemisia montana Pampanini (Compositae)の葉及び枝先である」とされ、ヨモギはその基原植物のひとつとなっています。(局方ではエングラーの植物分類体系を用いているので、表記の学名と異なっていますが、ヨモギを指していることには違いありません。)
前述のようにもぐさはヨモギの葉の綿毛を利用して作られますが、実際には同属で質の良いオオヨモギ(A.montana)の葉からとられたものが主として利用されているようです。