ツゲ科フッキソウ属は東アジアと北アメリカに5種が分布する匍匐性の常緑の小低木です。その中で、フッキソウ(Pachysandra terminalis)は北海道から九州まで日本各地にみられ、中国やサハリンにも分布しています。
高さ20~30cmほどになり、一見”草”のように見えますが、地下茎が横に這って繁茂する小低木で、林床を覆うほど茂ります。写真のように縁に荒い鋸歯を持つ光沢のある革質の葉を持ち、密に互生しますが輪生に近く見える着き方をします。
早春の3~4月に茎の先に穂状の花序を出し、上部に雄花を20個ほど出しますが、白く見えるのは太い4本の雄蕊で、4枚ある花被片は小さくうす緑で目立ちません。学名の属名のパキサンドラは、ギリシャ語で”太い雄蕊”を意味するそうですが、この花の特徴をよく捕えています。雌花は花序の下部に数個着きますが、やはりうす緑で目立ちません。果実は径1.5cmほどの球形になり、秋に白く半透明に美しく熟します。
フッキソウは葉も美しく、湿り気のある日陰を好んで土壌も選ばず、繁殖が容易なので、高層ビルの谷間の植え込みや、カバープランツとしても最近よく利用されており、斑入りの園芸種なども見うけられます。
漢字では「富貴草」とあてますが、キチジソウ(吉事草)、キチジョウソウ(吉祥草)などのおめでたい別名もあります。これは常緑でよく葉がよく繁茂する様子から繁殖を祝う意味で付けられたとされています。(これとは別に、ユリ科のReineckia carneaにキチジョウソウの名があてられています。)
このように最近は観賞用に植栽されることが多くなった植物ですが、漢方では乾燥した熟果に強壮の効能があるとされています。また中国では全草を「雪山林」と称され、民間薬としてリウマチ、月経過多、消炎解毒や慢性気管支炎に効果があると記載されています。北海道のアイヌ民族では全草を乾燥して、胃腸薬として用いるそうです。