BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ピペル・アウリツム(コショウ科)

Piper auritum Kunth

ピペル・アウリツム

ピペル・アウリツムはメキシコ南部からコロンビア原産の大形の多年草です。草丈は通常1~2m、文献によると時に5m以上にもなり、大きな薮を作ります。茎は基部が木質化します。葉は互生、左右非対称の心形で長さ50cm以上になります。

ピペル・アウリツムの花序は枝の葉腋に生じ、長さ20cmほどになります。花序の生長中や開花後は曲がっていますが、開花中は直立します。花からは多数の花粉が出ているのが確認できますが、雌花が見あたらず結実もしないので、この株は雄株かもしれません。しかしながら、種子が飛んでいないにもかかわらず、鉢植えから1、2m離れた地面に突然小さな株が現れて驚きました。おそらく鉢穴から飛び出した根が、地面に潜り込んで広がり、根の途中から萌芽したものだと思われます。

ピペル・アウリツムの全体にはコショウとはやや異なる刺激的な芳香があり、これは文献では「サルサパリラ(Smilax medica、S. regeliiなどのシオデ属の乾燥根で、一般に強壮に用いられる)」に似た香りだといいます。そこで先日、屋外で栽植のSmilax medicaの根を掘ってみましたが、寒いから匂わないのか、乾かさないと「サルサパリラ」の匂いにならないのか、結局比較することはできませんでした。

ピペル・アウリツムの葉は、中央アメリカ各地で様々に利用されます。食用としてはグアテマラでは肉や巻き貝(Jute)の香り付けに、メキシコではタマーレ(tamale)の味付けにします。薬用としては、メキシコでは食後の健胃薬に、ユカタンでは発熱や丹毒、痛風、扁桃炎に対しての発汗、利尿、賦活薬に、キューバでは皮膚軟化薬に、コスタリカでは頭痛薬に、それぞれ用います。