BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ニオイキンリュウカ(キョウチクトウ科)

Strophanthus gratus (Wall. et Hook. ex Benth.) Baill.

ニオイキンリュウカ

ニオイキンリュウカは熱帯アフリカが原産のつる性木本です。以前(2014年7月)に紹介したストロファンツス・コンベ(Strophanthus kombe)が茎や葉の全体に軟毛が生えていたのに対して、ニオイキンリュウカは無毛です。葉も、より厚みがあって革質です。和名のニオイキンリュウカは、キンリュウカ(S. divaricatus)の仲間で匂いがあるということです。確かに、ニオイキンリュウカの花に顔を近づけると良い香りがしますが、温室中が匂うというほどではありません。

ニオイキンリュウカの花は枝の先端に着きます。ストロファンツス・コンベの場合は、夏に伸びたシュートを冬に好みの位置で切ると、翌春に切り口の下から伸びてきた横枝の先に花をつけるので比較的簡単に開花を楽しめます。しかし、ニオイキンリュウカは切ると咲きにくいので放置気味にしています。植えている場所が狭いのも咲きにくい一因かもしれません。インドネシアの植物園で栽培されているのを見たときには、広い敷地で直径4mくらいの半球形に仕立てられていたので、まずはのびのびと育ててやるのが開花のコツだと言えます。ニオイキンリュウカの花は直径5㎝くらいで淡い赤紫色の豪華な花です。果実はキョウチクトウ科に独特な左右に角状に伸びる丁字型で、しかも両端の角の長さが40㎝にもなる巨大な果実となります。しかし、1株では結実しにくいそうで、山科植物資料館ではまだ結実したことはありません。

ニオイキンリュウカには全草にウアバイン(別名G-ストロファンチン)を含みます。G-ストロファンチンのGはS. gratusのGです。ウアバインは欧米では強心剤として用いられます。しかし、かつての日本薬局方(第2改正から第7改正まで)に収載された「ストロファンツス」および、現在欧米で用いられているのはS. kombeとS. hispidusを原料とするものだとのことです(木下武司「歴代日本薬局方収載生薬大事典」)。