BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

チヨウキンレン(バショウ科)

Musella lasiocarpa (Franch.) C.Y.Wu ex H.W.Li

チヨウキンレン

チヨウキンレンは中国南部からインドシナ半島にかけての標高1500~2500mに分布する多年草です。チユウキンレンとも呼びます。漢字で書くと地湧金蓮、中国語では地涌金莲と書いてdi yong jin lianです。中国簡体字の涌、莲はそれぞれ日本の湧、蓮と同じ意味です。バショウ科はバショウ属Musa、エンセーテ属Enseteと、このチヨウキンレン属Musellaの3属からなります。チヨウキンレン属は本種だけの単型属です。種子ができると枯れてしまうエンセーテ属、種子ができても枯れずに吸芽で増えるバショウ属の区別はわかりやすいのです。一方で種子ができて吸芽もできるチヨウキンレン属がバショウ属とどう違うのかはよくわかりません。エンセーテ属に似た姿をしているが結実後も枯れないことや、根の部分に違いがあるようなのです。

チヨウキンレンの地上部の幹はバナナと同じ偽茎で、葉鞘が集まったものです。本来の茎は地中にあります。春になると地中の茎から花序を伸ばし、葉鞘の中から顔をのぞかせます。苞は鮮やかな黄色で、地湧金蓮(地から湧く金の蓮)の名前の通りです。本来の花はバナナと同様で、1枚1枚の苞の間に数個ずつ付きます。花からは多量の蜜がでるらしく、常にアリが群がっています。苞の間に溜まった水にアリがおぼれているのを見ると、アリにとって水で薄まっても採集したくなるくらい、魅力的な蜜であるように思えます。今年初めて咲いたのでいつまで咲き続けるのか分かりませんが、聞いたところでは半年以上も咲き続けるというので鑑賞を続けるのが楽しみです。

チヨウキンレンは中国では棚田の縁や道路沿いなどの斜面に植えられて土留めの役割を果たします。花序は止血の作用があるとされて子宮出血や大腸出血に用いられます。偽茎や地下茎はブタの餌となります。