BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

オベロニア・エンシフォルミス(ラン科)

Oberonia ensiformis (Sm.) Lindl.

オベロニア・エンシフォルミス

オベロニア・エンシフォルミスはヒマラヤ東部から太平洋諸島にかけて広く分布する小形の着生蘭です。日本には同属のヨウラクラン(Oberonia japonica (Maxim.) Makino)が分布します。ヨウラク(瓔珞)とは仏像の天蓋に付ける垂飾のことで、長く下垂する花序に因みます。属名Oberoniaはヨーロッパ中世の伝説に登場する妖精の王Oberonのことです。種形容語ensiformisは剣形葉の意味です。同種異名でO. iridifolia (Roxb.) Lindl.という呼び方もありますが、この種形容語もやはり草姿がアヤメ属(Iris)の形をしていることに因みます。この属の植物はどれも同じような草姿をしているのに、本種だけがことさらに剣形葉を主張しているのは、単に発見、命名が早かったからでしょうか。

オベロニア・エンシフォルミスは1枚の葉の長さが10~15cmくらいで5、6枚がアヤメのように重なって互生します。花序は先端から伸びます。長さ10cmほどの花茎に長さ2mmほどの極めて小さな花を輪生します。この花を、多くのランの花と同じように唇弁を下に向けてみますと、黄色の頭髪を逆立てて腕を広げ空中に浮かぶ小人のように見えます。たくさんの小人が花茎を取り巻く様を見れば、妖精の王の名前が付けられたのも納得です。

オベロニア・エンシフォルミスは中国南部では薬用となります。全草を煎じて服用、または撞いて外用します。膀胱炎、尿道炎、打撲傷、骨折に効果があるといわれます。