BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

オランダシャクヤク(ボタン科)

Paeonia officinalis L.

オランダシャクヤク

<ヨーロッパの芍薬として、薬用・鑑賞用に用いられる>

“シャクヤク”はボタン科ボタン属の多年生草本類の総称で、中国、日本、ヨーロッパ、アメリカの一部やシベリアなどの地域に、亜種や変種を含めて30種以上が分布しています。
なかでも、当帰芍薬散や芍薬甘草湯などの多くの漢方処方に配合される生薬の「芍薬」は日本薬局方にも収載される重要な生薬で、中国や日本で古くから栽培されるシャクヤクPaeonia lactifoliaの根が基原とされています。
一方、今回取り上げたオランダシャクヤクはセイヨウシャクヤクとも呼ばれ、南ヨーロッパ、西アジアの原産の芍薬の一種です。ヨーロッパでは、ヒポクラテスの活躍したギリシャ時代から癲癇に用いられたり、またローマ時代のディオスコリデスの「薬物誌」には月経誘発や出産後の胎盤排出促進に用いる記載があったり、古くから薬用として利用されてきた植物のひとつです。
茎は直立して、草丈40~60cmほどになり、2回3出複葉で互生し、小葉は長い楕円形で先は尖っています。花期は5~6月頃で、茎の頂きに写真のような赤紫色の花をつけますが、1本の茎に1輪の花をつけるのが特徴です。一方、シャクヤク(P.lactifolia)の場合は1本の茎に1~3個ほどの花をつけます。
古くから、根を月経促進、産褥熱、胃痛、黄疸、膀胱疾患、下痢、癲癇、痛風、喘息、リウマチなどに、果実を子宮出血、子宮痙攣、結石などに、種子を虫歯や癲癇に用いられてきましたが、現在ではほとんど利用されません。
根にペオノール、ペオニフロリンなどの特異な成分のほか、アスパラギン、安息香酸などの成分を含むことが知られています。
ヨーロッパでは薬用ばかりではなく、観賞用、装飾用にも中世から栽培されており、園芸品種も作られています。日本には大正時代の初期に導入され、切り花や花壇の鑑賞用に栽培されています。