BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

アリストロキア・マクロウラ(ウマノスズクサ科)

Aristolochia macroura Ortega

アリストロキア・マクロウラ

アリストロキア・マクロウラは南米の東側、ブラジル南部からウルグアイ、パラグアイを経てアルゼンチン南東部までの主に海岸地帯の林中に分布するつる性の多年草です。

アリストロキア・マクロウラは直径4~8㎝くらいの3深裂する葉を互生します。花は葉腋に単生します。花は長さ10㎝くらいの袋状でウツボカズラの捕虫器のような独特の形状をしています。この袋は蕚が変化したもので、花弁はありません。袋の蓋にあたる上唇には長さ15㎝ほどの尾状突起があります。袋を切り開いたところ、ハエが飛び出してきました。内部にはコンニャクやリュウキュウハンゲとは似ているが、質の異なる悪臭があります。そう思ってよく観察すると、上唇の内側はつやのない紫褐色でリュウキュウハンゲの仏炎苞と似た質感があります。雄しべは6個あり、雌しべと合着して蕊柱をつくります。蕊柱を正面から見た写真を撮ったところ蕊柱の周囲の蕚筒は半透明になっていて、光を通すことが分かりました。匂いに誘われて袋に入ったハエなどの昆虫は、奥へ進むほど明るくなるのに誘導されて蕊柱に到着し、受粉を助けてしまうのです。果実は長さ5㎝ほどで基部の割れ目から三角形の種子を飛ばします。

アリストロキア・マクロウラは珍妙な花の形ばかりが注目される植物ですが、橋本梧郎『ブラジル産薬用植物事典』によれば、ホテイカズラ(Philodendron martianum Engl.、サトイモ科)と同様に葉柄の汁を頭髪の強壮剤に用いるということです。
アリストロキア・マクロウラの花

アリストロキア・マクロウラの花の断面

アリストロキア・マクロウラの蕊柱を正面から見たところ

アリストロキア・マクロウラの果実