BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ヒガンバナ(ヒガンバナ科)

Lycoris radiata (L'Hér.) Herb.

ヒガンバナ

<秋を代表する花であり、アルカロイドを多く含む毒草。>

秋分の日も過ぎ、急に秋めいてきた時期ですが、この季節に目に入る野の花といえばヒガンバナ(Lycoris radiate)がその代表と思います。彼岸の頃に花茎が出て赤い特徴的な花をつけるので、みなさんよくご存知の植物です。
中国の原産で、中国の暖・温帯から北海道をのぞく日本全域に分布し、田んぼの畦や土手、人里に近い野原などに生えます。日本のヒガンバナは3倍体なので種子はつきませんが、中国には2倍体で種子のなるものが知られています。
鱗茎に有毒なアルカロイド類が含まれていることが知られていて、口にすることは危険です。しかし、民間薬としてはすりつぶした鱗茎を足の土踏まずにあるツボ・湧泉に貼って、胸膜炎や肝硬変、腹水や胸水、関節炎の水を尿へ排泄させたり、湿布として乳腺炎・乳房炎などの腫れをとるのに利用できることが知られています。
アルカロイドとしては、リコリン、リコラミン、タゼッチン、ガランタミンなどが含まれることが知られる毒草ですが、ガランタミンは近年アルツハイマー型認知症治療薬として開発されたので脚光をあびた植物成分のひとつです。
一方、鱗茎には20%もの澱粉が含まれることが知られ、救荒植物として鱗茎をすりつぶしたものを水にさらして澱粉だけを精製して、食用とされてきたことも知られています。
日本に自生するヒガンバナ属植物はヒガンバナのほか、キツネノカミソリ(Lycoris sanguinea)、ショウキズイセン(Lycoris traubii)、シロバナマンジュシャゲ(Lycoris × albiflora)とナツズイセン(Lycoris × squamigera)が知られています。このうちショウキズイセンとキツネノカミソリだけが種子繁殖をしますがほかは不稔です。
特にシロバナマンジュシャゲはヒガンバナそっくりの花ですが白色で、紅白の対象で目に付きます。ショウキズイセンとヒガンバナの2倍体との交雑の結果できた種といわれ、九州には自生しており中国から渡来したと考えられています。ここではヒガンバナに加えて、シロバナマンジュシャゲの写真も上げておきます。