ツルドクダミは、中国原産のタデ科のつる性多年草ですが、現在では日本全土の山野に広く見られます。日本には生薬の国産化に積極的だった八代将軍徳川吉宗の時代の1720年(享保5年)に中国から取り寄せられ薬用として栽培が始められ、そののち日本の各地に自然に生育するようになった植物です。
Polygonum multiflorumあるいはPleuropterus multiflorusというシノニムがあります。
和名は、ドクダミに似た長さ3~6cmほどの心臓形をした葉をもつことに因み、茎の基部は木質となり、つるはよく分枝して数メートルの長さになります。
花期は8~10月で、写真のように葉腋から円錐花序を出し、白色の小さな花を多数つけます。
根はサツマイモのような硬い塊根になり、1kgを超えることもありますが、この塊根を輪切りにして乾燥させた生薬をカシュウ(何首烏)といい、漢方では、強壮、補血、解毒、緩下剤として用いられます。カシュウは現行の日本薬局方にも収載されている生薬で、「ツルドクダミPolygonum multiflorum Thunberg (Polygonaceae)の塊根で、しばしば輪切される。」と定義されています。
塊根には、エモジンやクリソファノールなどのアントラキノン類やスチルベン配糖体などの特異な成分のほか、タンニンや脂肪、デンプンなどを含むことが知られています。
血中コレステロール低下、強心、血糖降下、抗菌、育毛などの薬理作用が知られ、またクリソファノールには腸蠕動促進作用が知られていて、強壮、解毒、緩下剤として便秘、慢性胃腸炎、腰膝痛、高脂血症、不眠症などに用いられます。また育毛剤として外用にされます。
因みに、何首烏(カシュウ)という名は、中国唐時代に何(か)という名の老人がこの生薬を用いて、その白髪・白鬚が烏のように黒くなり若返ったという伝説によるものと言われています。