スリナムニガキ(クアッシア、カシア)は南米熱帯原産の常緑低木で高さ6~7mくらいになります。この植物の樹皮は、「クアッシア(カシア)皮」と呼ばれ、薬用とするために栽培されることもあります。葉は奇数羽状複葉で、葉軸に翼があるのが特徴です。花は美しい緋赤色の筒状の花で、枝先に数花着きます。
属名のQuassiaは、この植物の薬効を初めてヨーロッパ人に紹介したスリナムの現地人Quassiの名に因みます。樹皮には苦味のあるカシン(quassin)などの成分が含まれています。これらの成分は、最も強い苦味をもつ天然物とされています。樹皮は健胃、解熱、駆虫に用いられてきました。また、抗マラリア薬やシラミ駆除薬としても利用されました。最近の研究で抗ウィルス作用や抗潰瘍作用も報告されています。
昔、この材木で作ったカップやボウルに食べ物を入れておくと苦み成分が移り、その消化を助けたといわれています。また、殺虫作用があり蝿取り紙や虫除けの箱を作るのに利用されました。
同じ「Quassia」の名で、ジャマイカニガキPicrasma excelsa(ニガキ科)の樹皮も商業的には広く流通しています。クアッシアと同様の苦味成分を含み、健胃薬とされます。ジャマイカニガキはジャマイカ原産の高さ20mになる落葉の高木です。
また、日本、台湾、朝鮮半島、中国には、近縁のニガキ(苦木)Picrasma quassioides(ニガキ科)が分布しています。やはり苦味成分を含有し、木部を苦味健胃薬として消化不良や食欲不振に用います。