BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

サフラン(アヤメ科)

Crocus sativus L.

サフラン


<柱頭を薬用あるいは食品の着香料として利用。>

サフラン(Crocus sativus)といえば、乾燥した柱頭を着香・着色料として、パエリアやブイヤベースなどの南欧料理に利用されることでよく知られています。しかしヨーロッパでは紀元前の昔より高価で貴重な薬物・香料・染料として利用されてきた生薬で、日本には1863年に移入されたとされています。
アヤメ科の多年草で、ヨーロッパ南部から小アジアにかけての原産で、草丈は15cmほど。直径2.5cmほどの球根を持っていますが、この球茎から線形または狭線形の葉を出します。葉は花の時期には短かく、花が終わると伸長して30cm以上になります。
開花期は11月頃で、写真のような淡紫色の花を咲かせます。鑑賞用のクロッカスも同じ属の植物で、花が美しいので鑑賞用にも栽培されます。
黄色い雄しべを持っていますが、雌しべは柱頭が長く伸び、濃い紅色となり先端は三つに分かれています。この柱頭を集めて乾燥させたものが生薬のサフランです。柱頭だけしか用いないために収量はわずかで、植物から得られる生薬のうちで最も高価な生薬とされています。
特異な香りがあり、味は苦く、口に含むと唾液が黄色く染まります。薬用としては鎮静、鎮痛、通経作用があって婦人薬の原料とされています。成分としては、苦味配糖体のピクロクロシン、カロチノイドのクロシンやクロセチン、サフラナールなどの精油成分を含むことが知られています。
薬用、香料、染料以外にも、香りが気分を落ち着かせることからアロマセラピーにも用いられていて、応用の広い生薬のひとつで繁用生薬ですので、日本薬局方にも収載されています