エリスロキトン・ブラジリエンシスは中米コスタリカからブラジル北部までに分布するミカン科の低木です。属名Erythrochitonは「erythro (赤色)+chiton (被包、覆い)」を意味し、赤色の苞に由来するようです。この属は中南米に7種分布し、本種が最もよく知られています。
エリスロキトン・ブラジリエンシスは高さ2~3mになります。葉は倒披針形で長さ20~30㎝です。鉢植えの葉はこのくらいの大きさですが、地面に植えると40~50㎝くらいになりそうです。葉は枝全体ではなく先端部に集中して付きます。花序は枝先近くから出ます。花序の柄は長さ15㎝くらいで先端に数個の花をつけ、散形花序のようです。ただし海外の標本などを調べると、大きな株では花序が長く伸び、たくさんの花が穂状につくようです。花を包む苞の長さは3㎝くらいで赤色から黄色です。当資料館の個体の苞は黄緑色です。もともとこの色なのか、ガラス温室内で紫外線不足のために赤くならなかったのかは、わかりません。苞から出てくる花は白色で直径4㎝、花弁は5枚です。葉も花も、レモンやダイダイのようなミカン科のイメージからかけ離れていて、むしろコーヒーノキやクチナシのようなアカネ科植物に似ています。果実はまだできていませんが、ミカン科のヘンルーダ(リンク)にやや似た、5つの膨らみを持つ不思議な形になります。この果実を見ると一つの丸い実をつけるアカネ科とは異なることがわかります。結実が楽しみです。
エリスロキトン・ブラジリエンシスの利用法は知られておらず、生態の情報もほとんどありません。海外の種苗会社では珍しい熱帯植物として販売されています。