<乾燥した根を前胡(ゼンコ)と呼んで鎮咳・去痰に用いる野草>
ノダケは関東より西の日本から朝鮮半島、中国に分布し、山間の丘陵地や草地に普通にみられる多年性の野草です。9月から10月ごろ、写真のようにセリ科に特徴的な散形花序の花を密生してつけますが、濃い紫色になるのでかえって眼につきます。
草丈は50cmから1.5mほどまでになり、茎は直立して上部は分枝します。葉は互生して柄のもとは鞘状に広がって茎を抱き、上部につく葉ほど葉鞘が大きくなり濃い紫色を帯びます。三出羽状複葉になり、小葉は卵形から皮針形で、ヘリは分裂して鋸歯状になりもとの方は翼状に流れます。
根は肥厚して分枝して深く地中に入りますが、この根を乾燥したものを生薬としては前胡(ゼンコ)といい、解熱、鎮痛、鎮咳去痰薬として感冒による頭痛や気管支炎などに用いられます。漢方では解表・止咳・去痰の効能があるとされ、参蘇飲、蘇子降気湯、荊防敗毒散などの処方に配合されています。
化学成分としてはノダケニンやデクルシンのほか精油成分のリモネンやエストラゴールなどが知られています。
前胡は重要な生薬のひとつで、第十五改正日本薬局方第一追補で日本薬局方に収載されました。