BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

インドジャボク(キョウチクトウ科)

Rauvolfia serpentina (L.) Benth. ex Kurz

インドジャボク

インドジャボクはインド亜大陸、東南アジアから中国南西部にかけてが原産の低木です。Rauvolfia(インドジャボク属またはホウライアオキ属)は世界の熱帯および亜熱帯、すなわち中南米、アフリカ中部から南部、インドから東南アジアと中国南部に分布し、Plants of the World Onlineでは78種が認められている比較的大きな属です。属名Rauvolfiaはドイツの医師で旅行家、植物学者であるLeonhard Rauwolf(1535 – 1596)への献名です。種形容語のserpentinaはラテン語で「蛇」(英語のserpentと同じ)を表し、この植物がヘビの咬傷に用いられたことに由来します。

インドジャボクは薬用植物として有名で植物園、薬用植物園で見ることができます。当資料館では最低気温10℃以上の春から秋までは屋外見本園で栽植し、冬季は掘り上げて温室内で管理しています。春に屋外へ出した直後は強烈な直射日光で葉が痛みますが、すぐに慣れて元気に生育し、たくさんの花と果実をつけます。
もともとはインドの民間薬で、ヘビの咬傷、昆虫の刺傷、解熱、抗赤痢、子宮収縮促進、老化防止などの目的で用いられました。一方、インドの伝統医学であるアーユルベーダ医学とは無関係だといわれています。インドジャボクの根および根茎には抗不整脈薬のアジマリン、鎮静・血圧降下薬のレセルピンが含まれます。アジマリンは1931年にパキスタンのSalimuzzaman Siddiqui(1897 – 1994)が発見し、レセルピンは1952年にチバ社(ノバルティスの前身の一つ)が発見しました。インドジャボクが生薬として使われることはほとんどありません。日本薬局方の中では、生薬総則および生薬試験法を適用するものとして「Rauwolfia serpentina Bentham(Apocynaceae)の根および根茎」である「ラウオルフィア」が第七改正日本薬局方〔昭和36(1961)年〕にのみ収載されています。医薬品各条の化学薬品等に規定されるアジマリンは第八改正から、レセルピンは第七改正からそれぞれ収載され、現在の第十八改正日本薬局方にも収載されています。

参考文献
木下武司『歴代日本薬局方収載 生薬大事典』(ガイアブックス)
Plants of the World Online. ‘Rauvolfia Plum. ex L.’ https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:328992-2