BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

バラニテス・アエジプティアカ(ハマビシ科)

Balanites aegyptiaca (L.) Delile

バラニテス・アエジプティアカ

ハマビシ科の植物は熱帯から温帯の乾燥地に生育していますが、当館で何種類か育ててみたところ、意外と育生が難しい植物群であることが分かりました。Zygophyllum fabagoは植え替えると、数日たたずして枯死してしまうし、Peganum harmalaは種子から発芽して4年間育てましたが、まったく大きくなりません。今日の主題のバラニテスも種子は発芽するのですが、20㎝位まで大きくなると枯死してしまいます。原因をいろいろと考えた結果”水”ではないかという結論に達しました。

一般に乾燥地帯の植物は茎が多肉化したり、葉が針状になって蒸散を押さえ、乾燥に耐えています。ところがバラニテスは、そのような構造になっておらず、樹高が10mにもなる常緑樹で常時、水を必要としているように見えます。いままで育生していたバラニテスは乾燥地の植物ということで、水を控えすぎて枯死したのではないか、と思われるのです。ところが一つ矛盾があるのです。バラニテスが生育している地域は年間の降雨量が200㎜前後なのです。日本で大雨なら1日で降る量です。この矛盾はSeed Leaflet 21 September 2000という文献で解決されました。バラニテスの生育地の多くは、平らな砂混じりの沖積地だということです。地下の深い所に伏水流か地下水が存在するのです。そのため深く根を伸ばすことができるバラニテスは、常に水を吸い上げることができ、乾燥に耐える構造を持っていなくても、乾燥地で常緑のまま大きく育つことができるのです。

以上のことからヒントを得て植木鉢で同じような環境を作ることにしました。バットに水を入れて鉢を置くのですが、そのままでは土が水を吸い上げ湿地になってしまい、根が酸欠になって枯死するおそれがあります。そこで鉢の下半分にジャリを入れ、砂含みの土を上半分に入れて移植したところ、ぐんぐん生長し始めました。根はジャリを突き抜けバットの水を必要なだけ吸い上げ、しかも上半分は乾燥したままです。バラニテスの果実は甘くておいしいそうですので、いつか味見する日を楽しみにして毎日バットに水を注いでいます。

バラニテスの写真
播種日:2001年9月7日
発芽日:2001年9月18日
2004年3月4日現在の樹高:52㎝