BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

コショウ(コショウ科)

Piper nigrum L.

コショウ

インド南部原産のコショウはすでに紀元前5世紀のギリシャで薬用として使用された記録が残っています。その後、ヨーロッパでは香辛料として重要な地位を占めるようになり、重量比で銀と同価値で取り引きされたといわれています。ポルトガル、スペインなどヨーロッパ諸国がコショウを求めてアジアを目指したことにより、大航海時代が始まりました。

コショウは常緑のつる性植物で、茎が木質化します。茎の節が太くなるのが特徴で、その節から根を出して他のものにからみつきます。葉は、革質で毛が無く、5から7本の葉脈が目立ちます。花は、穂状の花序となり下垂します。雌雄異株または雌雄同株ですが、栽培されているものは雌雄同株が多いようです。また、雌雄同株のタイプでも雄花序と雌花序が別となる単性花のものから、雌雄が揃った両性花まで変異があるようです。

当館のものは、一見すると雌しべの柱頭がよく目立ちますので、雌雄異花の単性花タイプだと思っていましたが、雄花序がどうしても見つけられませんでした。それでも、結実するので不思議でしたが、花序を実体顕微鏡で拡大してみると、実は雄雌両方揃った両性花タイプであることがわかりました(写真参照:白いヒゲ状のものが柱頭で雌しべ。その横のコブのようなものが雄しべ)。

私達が台所で目にするコショウには、「黒胡椒(black pepper)」と「白胡椒(white pepper)」があります。これらは同じコショウの果実に由来するもので加工方法が異なるだけです。黒胡椒は、成熟直前に収穫し乾燥した果皮付きのものです。一方、白胡椒は、赤く熟した果実を数日間水に浸けた後、果皮と果肉を取り除いて水洗後乾燥したものです。白胡椒は、黒胡椒のような強い香味がありませんが、爽快で上品な味があるとされています。
黒胡椒 (左) と白胡椒 (右)