オニナベナは高さ 2m にもなる越年草で、ヨーロッパや西アジアに分布しています。茎には細かい剛毛が密生します。頭花は卵球形で、花は頭花を巻くようにリング状に咲き始め、その後、上下に咲き広がっていきます。咲き方が面白いため、日本では鑑賞用として、またドライフラワーにします。属名の Dipsacus は Dipsa (渇き)と cus (適応や関係などを表す接尾語)から名づけられました。これはオニナベナの葉が対生で、葉の付け根が茎の部分に癒着してくぼみができ雨水が溜まることに由来します。この水は民間療法では眼の疾患に効果があると考えられていました。根も炎症の治療や胃の強壮に用いられたようですが、現在ではほとんど使われていません。
オニナベナの仲間にラシャカキグサ(羅紗掻き草)があります。花序の小苞の先端が、鉤状に曲がるのが特徴で、花序を羅紗の起毛に用います。 日本でも明治時代に植物がヨーロッパから導入され、織物工業の盛んな大阪の泉州地域で栽培されていました。最近では大部分が針金製に代わってしまいましたが、 ラシャカキグサ ほどの弾力性がなかなか出せないために、ビリヤード台の緑の羅紗をとく櫛には、今でもこの植物の花序が使われることがあります。
当館では昨年(2004年)の 3 月初めに発芽させ、野外に定植しました。 1 年目は株が大きくなり、 2 年目に茎を長く伸ばして花序が現れ、 7 月初旬に開花しました。