ミドリサンゴは熱帯アフリカのサバンナ原産の高さ7mにも達する多肉植物です。栽培が容易で成長も速いために生垣に栽植され、現在では広く熱帯、亜熱帯地方に野生化しています。この植物の葉は茎の先端につきますが、早くに落ちてしまうために棒状の緑の茎だけが残り、あたかも緑色のサンゴのように見えます。その奇妙な姿から日本では園芸植物としてなじみがあり、温室などで栽培されています。また、中国では緑玉樹とよばれて薬用にされ、乾燥した植物を疥癬などの外用薬として用いることもあるようです。
ミドリサンゴの茎を傷つけると、白色の乳液が出てきますが、これは皮膚につくとかぶれることもあるので注意が必要です。ところが過去にこの乳液がガソリンに似た成分を含むということで、注目を浴びたことがありました。ガソリンの原料である原油はいずれ枯渇するといわれていますが、もし、継続的に栽培してこの植物からガソリンを得ることが出来れば、枯渇の心配がありません。このような石油に近い炭化水素成分を多く含み抽出することが出来る植物を石油植物(Hydrocarbon-rich plants)といい、他にユーカリ(Eucalyptus globulus)などがあります。ミドリサンゴの乳液は石油に近い炭化水素を1%程度含み、植物を茶畑方式で栽培して収穫した後、乾燥して有機溶剤でこの炭化水素を抽出します。 しかし、今の技術では加工コストが高いことや、乳液に毒性があるといわれているため、ミドリサンゴによるガソリンの生産は行われていません。当館では1995年に導入されましたがあまり実用性がないということで、案内することもありませんでした。しかしながら昨今の原油高、この植物を枯渇しないエネルギー源としてもう一度注目してみてもよいのではないでしょうか。