BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

マタジャムノキ(ムクロジ科)

Lepisanthes rubiginosa (Roxb.) Leenh.

マタジャムノキ

マタジャムノキは熱帯アジアからオーストラリアにかけて分布する潅木ないしは中高木です。「マタジャム」はマレー地方の現地名Mertajamのことです。昭和の終わりくらいまでに出版された書籍にはErioglossum rubiginosum (Roxb.) Blumeの学名が使われていましたが、現在はLepisanthes属に含められます。

当館のマタジャムノキは鉢で栽培しています。鉢植えですと塊状の根から短命の幹を複数伸ばす潅木となり、高木になる気配は見られません。明るく開けた場所のような良い条件では、高木状に育つのかもしれません。若い幹や葉には軟毛があります。葉は長さ30cmほどの羽状複葉です。幹の先端に円錐花序をつけます。花は乳白色で直径5mmほどで全開しません。文献では蜜様の甘い香りがあるというのですが、嗅いだことはありません。夜中など、勤務時間外に香っているのかもしれません。花は両性花と雄花があり、両性花が雄花に先立って咲きます。果実は長さ1cmほどの楕円形で、赤色から紫色に熟します。

マタジャムノキの果実は食用となりますが、市場に出回るほどではなく、子供たちが野遊びでつまんで食べる程度だとのことです。若葉も野菜として食べられます。材木は硬くかつ重くて亀裂が入りにくいため、米搗き用の杵やハンマーなどの柄に用いられます。薬用としても利用されていて、根の煎汁は解熱に、果実を産後の保養薬として用い、種子は咳止め、根や葉は熱病時の頭痛や、皮膚病に罨法剤として用います。