このホームページでも複数のコショウ属植物を紹介してきましたが、今回取り上げるフウトウカズラは、日本に自生しているコショウ属植物のひとつです。日本のコショウ属は、このフウトウカズラと小笠原の母島に自生するタイヨウフウトウカズラのわずか2種のみが知られています。
本州の関東南部から西の日本に自生していて、沖縄、台湾、朝鮮半島南部にも見られ、特に海岸に近い林中に大きな木に絡みつく匍匐性の常緑木本植物です。
葉は、厚みのある卵形で葉柄があり5~8cm程度の長さで互生します。花序は葉の付け根の葉と反対側から垂れ下がります。特に雄花は長く垂れ下がり、たくさんつきますので、花の時期は遠目でもすぐにわかります。
雌雄異株で、5~6月ごろ、写真のように黄色い細長い花序を雄株、雌株それぞれ出します。受粉すると冬には赤い液果が房状になり、見かけはコショウによく似ていますが、この果実には辛味が無くて、コショウの代用には出来ないようです。しかし全草にいくぶん特異な香りを持っています。
香辛料としては利用できませんが、九州や南西諸島では、葉や茎を風呂に入れて薬湯とすると神経痛や打撲や骨折などに効果があるとされています。
また中国ではこの植物の茎を「海風藤」といって、関節の疼痛、打撲傷、ぜ喘息、慢性の咳に煎じたり酒に浸して内服することが知られています。
因みにフウトウカズラのフウトウは「封筒」ではなく、「風藤」の字が当てられています。牧野植物図鑑には、この植物は日本にない風藤と間違えて名づけられた趣旨が説明されていますが、「風藤」自体が具体的にどんな植物をさしているのか、よくわかっていないようです。もしご存知の方があればご教示いただければ幸いです。