ヒドラスチスは北アメリカ東部に分布する高さ30cmほどの多年草です。属名Hydrastisは「hydr (水)」+「astis (住民)」を意味し、湿地に生息することによります。Hydrastis属はこの1種だけが知られています。
ヒドラスチスは4月中旬から下旬に芽を出し、互生する2、3枚の葉を広げ、茎の先端に1つの花をつけます。葉は鋸歯のある掌状葉で開花後に展開します。花の大きさは直径1.5cmくらいです。花には3個の萼がありますが開花時に脱落します。花弁は見あたりません。白い雄しべと先端の葯、中央の緑の雌しべが特徴的な花です。果実は直径1.5cmくらいで赤色、キイチゴのような形で美味しそうですが、どの図鑑にも食用不可と書かれています。果実の中には黒褐色の種子が数個入っていますが、発芽には時間がかかるとされます。3年前から開花するようになりましたが、過去2回に採れた種子からはまだ発芽しません。気長に待っていれば、今後、発芽するのかもしれません。
ヒドラスチスは英語でGoldenseal (Golden Seal)またはOrange rootといい、根や根茎が黄色いことに因みます。黄色の成分は、オウレンやキハダ (オウバク)、メギと同じで、アルカロイドのベルベリン (berberine) です。他のアルカロイドとしてヒドラスチン (hydrastine)、カナジン (canadine) を含みます。チェロキー族などのアメリカ先住民は虫除けや目の痛み、消化管機能不全に使っていました。現在のアメリカでは、健康食品として消毒、止血、利尿、緩下、強壮作用などの目的で用いられます(日本では利用できません)。医薬品としてはかつて子宮止血薬、月経鎮痛薬として使用され、現在は洗眼薬や強壮薬の素材として用いられます。