BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ヒドロレア・スピノサ(セイロンハコベ科)

Hydrolea spinosa L.

ヒドロレア・スピノサ

ヒドロレア・スピノサはアメリカ合衆国の南部(テキサス州)から中央アメリカを経て南米大陸に分布する大型の多年生草本です。原産地では高さ2mほどになるそうですが、鉢植えでは50cmくらいです。セイロンハコベ科は本属のみの単型科です。世界中の熱帯に12種が知られ、日本では見られませんが東南アジアにセイロンハコベ(Hydrolea zeylanica (L.) Vahl)が分布します。セイロンハコベ科はかつてハゼリソウ科(Hydrophyllaceae)に含められていました。ハゼリソウ科とセイロンハコベ属は分子生物学的な違いだけでなく、ハゼリソウ科が側膜胎座なのに対してセイロンハコベ属は中軸胎座であることや、胚発生の違いからも区別されます。また、セイロンハコベ属を除くハゼリソウ科はAPG分類体系ではムラサキ科に含まれます。セイロンハコベ科はナス目、ハゼリソウ科を含むムラサキ科はシソ目(APG III時点。その後のAPG IVではムラサキ目)なので、これらは目のレベルで異なることがわかりました。つまり、これまで同じ科とされていたのは他人のそら似であったというわけです。

ヒドロレア・スピノサは毛のある茎を持ち、葉は長さ10cmほどの緩やかに波打つ披針形です。葉の基部には鋭い刺があり、種形容語spinosaはこれに由来します。ヒドロレア・スピノサの花は茎の先端に総状につきます。花の直径は1cmくらいで、花弁は藍色がかった濃い青色でたいへん鮮やかなものです。雌しべは2本で青く、雄しべは5本あります。雄しべ先端の花粉は黄色く、青い花弁とのコントラストも鮮やかです。果実は長さ5mmほどで2室に分かれており長さ1mmに満たない微小な種子がたくさん詰まっています。

ヒドロレア・スピノサはこの科の中で最も高緯度に分布するため比較的寒さに強く、当館では無加温フレームで越冬しました。丈夫でよく殖えて鮮やかな花をつけるのに、園芸的には全く顧みられていません。刺が嫌われるのかもしれません。