ユズリハかシャクナゲに似た厚くて丸い葉は、冬でも美しい緑色で、三月になると開き始める花は、遠くから見ると色と姿はツバキに似ています。しかし、近づいてよく見ると葉と花の形がそれらと全く異なるため、見学者に植物名をしばしば尋ねられます。当館では露地で栽培しているので春先の園内で特によく目立つのかもしれません。
シャクナゲモドキは、中国南部から西マレーシアに分布する植物です。葉の感じがシャクナゲに似ているので「シャクナゲモドキ」の名前が付いています。しかし、実は日本の野山で春を告げるマンサクの仲間です。黄色のマンサクとは異なり、シャクナゲモドキは紅色の花を咲かせます。花をじっくり観察してみると、五つの花が集まって一つの花序を作っていることがわかります。一つ一つの花はマンサクと同じような構造をしています。
学名のchampioniiは、香港で最初にこの植物を発見したプラントハンターでありイギリス軍人であったチャンピオン(J. G. Champion)に因みます。当館栽植のシャクナゲモドキは、香港の植物園から三十年前に種子で導入したものです。一般に温室植物として栽培されますが、当館では思い切って露地で栽培したところ京都の寒さにも耐え、現在高さ3mを越すくらいまでに生育しています。