BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ケンペリア・パルウィフロラ(ショウガ科)

Kaempferia parviflora Wall. ex Baker

ケンペリア・パルウィフロラ

ケンペリア・パルウィフロラはタイに分布、栽培される多年草です。属名は江戸時代に日本に滞在し、「廻国奇観」や「日本誌」を著したドイツ人の医師Engelbert Kaempferにちなみます。種形容語は「小形の花」という意味です。日本ではクロウコンとか、タイ名にちなむクラチャイ・ダム(Krachai dam、กระชายดำ)、英語にちなむブラック・ジンジャーなどと呼ばれています。しかし属名を見ればわかるようにウコン(Curcuma)の仲間でも、ショウガ(Zingiber)の仲間でもありません。

ケンペリア・パルウィフロラはショウガよりも小さな2、3cmの球形が数珠繋がりになったような塊茎をしています。塊茎の断面は黒に見えるような濃い赤紫色をしており、これがクロウコン、ブラック・ジンジャーの所以です。塊茎の節から高さ10~20cmくらいの偽茎、長さ20cmくらいの披針形の葉を数枚出します。偽茎の先端から頭状花序を出し、一度に1、2個の花を咲かせます。地上部全体の姿はオオバンガジュツ(タイ名クラチャイ กระชาย)に似ていますが、花の形は同属のバンウコンによく似ています。種形容語にあるとおり、バンウコンの花が直径3、4cmあるのに対して、ケンペリア・パルウィフロラの花は直径2cmほどです。さらに花弁が細長いことからますます小さな花の印象を受けます。ショウガ科の花としては典型的な形をしており、3枚の花被片の内1枚は上を向き、2枚は唇弁の裏にあります。6個ある雄しべの内、2つは合着して雌しべを包み、2つの仮雄蕊(かりゆうずい)は合着して1つの唇弁となり、残り2つの仮雄蕊は花弁のように左右に広がります。

ケンペリア・パルウィフロラの根茎は、東南アジア、特にタイ、ラオスで伝統的に薬用とされてきたとされますが、当資料館が所蔵する東南アジアの薬用、有用植物に関する書籍には全く出てきません。20世紀の間は西洋人の目に止まらなかったのか、比較的最近までタイの人々が秘匿してきたのか、不思議なことです。この10年くらいに活発に研究されているところによると、根茎はフラボノイド類を多く含み、動物実験やインビトロの実験系で胃潰瘍や抗炎症、抗アレルギーなどに効果が認められたということです。