(※2003年1月の公開当時のまま掲載しています。現在のAPG分類体系ではカエデ科はムクロジ科に含まれます)
ちはやぶる神代もきかず竜田川 から紅に水くくるとは」と百人一首に詠まれた竜田川流域は古来より紅葉の名所です。この紅葉の中心になるのがカエデ科の植物たちです。実はカエデ科には2属しかないことを御存じでしたか。一つはカエデ属(Acer)で、もう一つはキンセンセキ属(Dipteronia)です。カエデ属は世界中に広がり、約150種ありますが、キンセンセキ属は中国北部の奥地の海抜1000-2000㍍の山中に2種が生育しているだけです。どうしてこのような差が2属の間に生まれたのでしょうか。
当館で毎日、灌水しながら観察している時に気が付いたのですが、Dipteronia sinensisは冬ばかりでなく夏にも落葉するのです。おそらく中国の生育地では夏に落葉することはないと思われます。Dipteronia sinensisにとって日本の京都の夏の暑さは耐えられないものなのでしょう。この気温に対する対応力の差が、熱帯まで分布を広げたカエデ属と中国の奥地から分布を広げることができなかったキンセンセキ属との差になっているのではないでしょうか。
絶滅が心配されているキンセンセキ属に、地球の温暖化が更に追い打ちをかけ、この属を地球上から抹殺しないことを願わざるをえない今日この頃です。
写真:Dipteronia sinensis
播種日: 2001年 3月 30日
発芽日: 2001年 5月 1日
撮影日: 2002年10月 4日