カンニンガムモクマオウは東オーストラリアに分布する高さ20m以上になる高木です。種形容語は人名(Cunningham)に由来することから、英語風に「カニンガムモクマオウ」と呼ぶこともあります。属名「Casuarina」はラテン語のヒクイドリ「casuarius」に由来し、小枝がヒクイドリの羽に似ていることに因みます。英名は「river oak」で、川近くに分布する、材断面の模様がoak(かしのき)に似た木の意味です。
カンニンガムモクマオウの枝は細く、節に小さな葉身をもつ葉状枝となっています。葉状枝の形からシダ植物のスギナやトクサの仲間のように見えますが、れっきとした被子植物で、今回紹介するように花を付けます(新しい分類体系(APG)では、ブナ目(Fagales)に含まれるというから驚きです)。カンニンガムモクマオウは観賞用に熱帯から暖温帯まで広く栽培されますが、日本には他に、北オーストラリア原産のトクサバモクマオウ(C. equisetifolia)も栽植されています。図鑑やインターネット記事ではトクサバモクマオウとカンニンガムモクマオウは非常によく似ているというので、どうやって区別するのか調べてみました。「日本の野生植物 木本」(平凡社)によると、カンニンガムモクマオウは「雌雄異株。集合果は球形,長さ幅とも8-10mm。葉状枝の溝は無毛」に対してトクサバモクマオウは「雌雄同株。集合果はふつう楕円形,長さ13-20mm,幅10-12mm。葉状枝の溝には短毛がある」とあります。当館には雌花がなく集合果の形を比べることはできませんので、葉状枝の溝を顕微鏡で観察しますと、写真のように確かに枝に溝があり短毛の有無を識別することができました。
カンニンガムモクマオウの雄花序は枝の先端につきます。節を取り囲むように6個ほどの小さな花が付き雄しべが1つ出ます。花序一つは長さ2cmに満たない小さなものですが苞葉が橙色で葯が赤いので枝先全体がほんのり赤くなり、かろうじて花の咲いていることがわかります。上記「日本の野生植物」にあるようにカンニンガムモクマオウは雌雄異株なので、この個体には果実はできません。
カンニンガムモクマオウは鑑賞用にされる他に、材木としても屋根板や桶、農機具の柄などに利用されます。またこの仲間の果実は松ぼっくりのようで面白い形をしていることからリースなどの装飾に使われます。
上:カンニンガムモクマオウの葉状枝(溝に短毛がない) 下:トクサバモクマオウの葉状枝(溝に短毛がある)