BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

カクチョウラン(ラン科)

Phaius tankervilleae (Banks ex L'Hér.) Blume

カクチョウラン

カクチョウランは日本では種子島、屋久島、琉球、海外では台湾、中国南部~ヒマラヤ、フィリピンに分布する、大型の多年草です。ガンゼキラン属Phaiusは日本では他に、本州南部太平洋側から琉球、台湾、中国、ヒマラヤ、東南アジア、メラネシアに分布するガンゼキランPhaius flavus (Blume) Lindl.があります。属名のPhaiusは暗色、灰色を意味するphaiosからきており、カクチョウランの花色に因みます。

カクチョウランは偽球茎の上に2~3枚の長さ50~70cmになる厚い葉をつけます。花茎は偽球茎基部の葉脇から60~70cm伸ばし、先端に数個の総状に花を付けます。原産地では5~6月に咲くようですが、当資料館の温室では年末から2月頃に開花します。花の大きさは10cmほどで、花の少ない冬の温室でよく目立ちます。花被片の外側は白色、内側は暗褐色です。唇弁の基部は白く、先端は赤紫色になります。

カクチョウランは鑑賞価値の高い植物であるため、環境省のレッドリスト(2012)で絶滅危惧II類(VU)に指定されています。中国南部(広西)では春から夏に採集した偽球茎を薬用とします。活血、鎮咳去痰、止血の効能があるとされます。打撲による腫痛、乳腺炎、外傷による出血に対して、内用(3~9gを煎じて飲む)または外用(粉末にして患部に貼る)します。