BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

イチゴノキ(ツツジ科)

Arbutus unedo L.

イチゴノキ

イチゴノキは地中海沿岸が原産の常緑高木です。当館の株は2000年に入手したもので、2本が並んだ幅は7m、高さ4mの見ごたえあるサイズとなっています。入手した頃は少し珍しい植物でしたが、最近(ここ10年位)は小型のものが出回っており、庭木としてよく見るようになりました。

イチゴノキの花は12月から2月にかけて枝の先端に着きます。花は釣鐘型でドウダンツツジやアセビに似ています。果実は約1年かけて11月から12月に赤く熟します。英語でもstrawberry tree(イチゴの木)と言いますが、イチゴというよりもヤマモモに似た形をしています。花と果実が同時に見られることから、白い花に赤や黄色の果実、緑の葉が混ざる姿はカラフルで、花が少ない冬の樹木園を彩ってくれます。

イチゴノキの葉や果実には、日本薬局方に収載される生薬であるウワウルシ(ツツジ科)の成分であるアルブチンが含まれます。ヨーロッパでは収れん、抗菌作用のある薬草として、葉や果実は下痢や赤痢の治療、うがい薬などに用いられます。また成分のアルブチンは美白効果があるとされ、化粧品にも利用されます。

果実はイチゴやヤマモモのような見た目でとても美味しそうですが、食べてみると甘みはなく、ナシの様でさらに固いザラザラした食感に期待を裏切られます。学名の属名Arbutusは古名で、種形容語のunedoはラテン語のunem edo、すなわち「一つだけ食べる」の意味です。「唯一の食べもの」と解説する書物もありましたが、先のように一つだけ食べる(二つ以上は食べられない)と解釈すると先人にとっても美味しくなかったのだと納得がいきます。生では食べづらいイチゴノキですが、ジャムなどに加工することで食べられます。

参考文献
マルカム・スチュアート. 1988. 原色百科 世界の薬用植物〔II〕ハーブ事典. pp. 53-54, エンタプライズ, 東京.