BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

アカネスイセン(アヤメ科)

Eleutherine bulbosa (Mill.) Urb.

アカネスイセン

<熱帯アメリカ原産の一夜花。球根を薬用とする伝統薬のひとつ。>

アカネスイセン(Eleutherine bulbosa)は、南アメリカの熱帯原産のアヤメ科の多年草で、その名の通り鱗茎(球根)の表皮は紫紅色をしています。鱗茎は長さ4cmほどの楕円形になり、長さ30~50cm、巾1.5~3cmほどの細長い槍状の根生葉を3~4枚出します。径2cmほどの花は白色で、夕方から咲き始めて、夜の間に咲き終わってしまう一夜花です。
ペルーではシャーマンがこの植物の鱗茎部の煎液を傷の治療などに用いることが知られ、他にも下痢や月経不順の治療に薬用として用いられる植物です。原産地からインドネシア、フィリピン、東南アジアからインドまで広範囲に薬用資源として導入されて、その地で自生するまでになっています。南アフリカでも栽培されているようです。
鱗茎部の表皮が赤紫色に見えるのは、色素のナフトキノン類を蓄積するためで、このほかに多くのアントラキノン類、ナフタレン化合物などの特異な化学成分を含むことが知られています。
球根部のしぼり汁や煎液を、外用としては創傷や出血、腫脹、打撲、火傷、毒魚・毒虫による刺傷の治療に用い、また内用としては利尿剤、下剤や吐剤として、また赤痢、炎症、脱腸、消化器寄生虫の駆除、月経不順の治療などにも使われてきた伝統薬のひとつです。