ほぼサクラ類と同時期に開花して、春を彩る花樹のひとつにユスラウメ(Microcerasus tomentosa)があります。よく庭園樹として植えられるので見かけることの多い落葉低木ですが、花のあと晩春に直径1cmくらいの赤い核果が鈴なりにできて甘酸っぱい素朴な味なので好まれる方も多いと思います。
中国華北の原産とされ、日本では江戸時代から栽培されており宮崎安貞の『農業全書』(1697)や貝原益軒の『花譜』(1694)にも登場します。
樹高は大きくなっても3m程度で、たくさん枝を出します。樹皮は暗褐色ではがれやすく無毛、若い枝は緑か暗褐色で毛があります。葉は長さ4~7cmの倒卵形で不規則な鋸歯があります。花は白または淡紅色でやや葉に先立ち開花します。果実は果肉は食べることができますが、中に硬い種子が一個あります。
葉にはフラボノイドのケルシトリン、材にはカテキンやクマリン配糖体のトメニン、種子にはサポニンや青酸配糖体のアミグダリンが含まれることが知られています。中国では果実を山桜桃といい薬用として下痢や遺精に利用します。また種子も山桜桃核と称して薬用にするようです。