BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

モロコシソウ(サクラソウ科)

Lysimachia sikokiana Miq.

モロコシソウ


モロコシソウは日本の本州以南、四国、九州、沖縄から、台湾に分布する小形の多年草です。和名は、昔の人が外来の植物と誤解して唐土(もろこし)と付けたといわれます。別名のヤマクネンボは、全体を乾かした香りがクネンボ(Citrus nobilis Lour. ウンシュウミカンの元になった柑橘)に似るとされたためです。

モロコシソウの花は葉腋に1個着きます。黄色の花は、同じ属のハマボッス(L. mauritiana Lam.)やコナスビ(L. japonica Thunb.)とはだいぶ異なり、昨年11月に紹介したコウトウタチバナによく似ています。しかしながら、コウトウタチバナの果実がマンリョウと同じ液果であるのに対して、モロコシソウの果実は、灰白色の蒴果になります。また、果実を割ると白い粉と共に小さな種子が出てくるところがクリンソウ(Primula japonica A.Gray)に似ているようにも思われます。

モロコシソウ全体を乾かした香りは、柑橘系というよりもカレー粉のような、ややスパイシーな香りです。日本では一般に、零陵香の原植物とされますが、「中葯大辞典 第二版(上海科学技朮出版社)」によると零陵香または薫香の原植物はLysimachia foenum-graecum Hanceのことです。零陵は中国の地名で、薫は古代に香草を焼いて神を降ろしたことに由来するといいます。もっとも、そもそもの零陵香は、カミメボウキ(Ocimum sanctum L.)が原植物であるといわれています。薬用としては、全草を煎じた液を健胃や歯痛に用います。沖縄では、酒および酢とともに煎じて、毒蛇の咬傷や蚊に刺された時の湿布薬とします。
ハマボッス
コナスビ