BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

マレシェルビア・リネアリフォリア(トケイソウ科)

Malesherbia linearifolia (Cav.) Pers.

マレシェルビア・リネアリフォリア

マレシェルビア科はマレシェルビア 1 属だけで、ペルー、チリ、アルゼンチンに生息する多年草です。なかでもマレシェルビア・リネアリフォリアはチリに生息します。属名のマレシェルビアはフランス貴族で大の植物愛好家だったマレシェルベ卿 (1721-1794 年 ) に因んだもので、彼が断頭台にかけられた同じ年にその名を讃えて命名されました。

マレシェルビア・リネアリフォリアの花は鮮やかで均整のとれた美しいものですが、細かく見ていくと複雑な形をしています。 10 枚の花弁のように見えるもののうち、外側の 5 枚は萼と花弁が合わさった花被片と呼ばれるものです。内側の 5 枚は副花冠と呼ばれるもので、雄しべや花弁が変化したものです。例えば、ラッパスイセンの花の内側のラッパの部分が副花冠です。トケイソウの花の花弁の内側にある糸のようなものも副花冠です。マレシェルビア・リネアリフォリアの花の中心には 5 本の雄しべと、雌しべがあります。雌しべは 3 本あるように見えますが、実際は 1 つの雌しべの先端が 3 つに分かれたものです。トケイソウも雌しべの先端が 3 つに分かれています ( トケイソウの写真は、こぼれ話第 29 回「チャボトケイソウ」を参照してください ) 。このように、トケイソウの花と共通した部分が幾つかあることから、かつてはトケイソウ科の一部とみなされることもありましたが、現在はマレシェルビア科として独立しています。

(初出時はマレシェルア科を採用していましたが、最新のAPG分類体系ではトケイソウ科に含まれます)

マレシェルビア・リネアリフォリアの花序は、主軸に対して総状ですが、枝分かれした個々の花は左右互い違いに花が出てくる単散花序になっています。枝分かれした 1 番目の花に対して、 2 番目の花が右側に付くか、左側に付くかは個体によって決まっています。この「右利き」「左利き」のどちらが多いのかは、よく分かりません。現在栽培中の全ての株が咲いたら、調べてみようと思います。