BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

マタタビ(マタタビ科)

Actinidia polygama (Siebold et Zucc.) Planch. ex Maxim.

マタタビ

<果実の虫癭をモクテンリョウ(木天蓼)といい、薬用とされる。>

マタタビというと「猫にまたたび」という言葉が、人口に膾炙していますが、実際にマタタビの煎じ液や粉末をネコに与えると、興奮したり、眠ったようになったりして、まるで酔ったようになります。これはマタタビの茎、葉や果実にマタタビラクトンやアクチニジンとよばれるネコ属に特有な興奮作用をもたらす成分が含まれているからで、ネコばかりでなくライオンやトラに対しても同じ作用があります。
マタタビは、日本では北海道から本州、四国、九州、対馬、さらにサハリン、東部シベリア、朝鮮半島、中国大陸にも分布する落葉性のつる性木本植物で、樹高は5mくらいにもなります。山沿いの平地から深山の谷沿いなどに群生します。
葉は互生して有柄で質は薄く、長さ8~15cm程度の卵形か長楕円形で、先は尖り葉先に鋸歯を持っています。
初夏の頃に新しい枝の中間の葉腋に、写真のようにウメに似た五弁の花を下向きにつけます。雌雄異株とされますが、両性花をつけることもあります。雄株では花のつく頃に枝の上の方の葉の表面が半分くらい白くなる特徴を持っていて人眼を引きます。
果実は正常に育つと、長さ2~3cmほどの長楕円形で先の尖ったどんぐりのような形になり、秋には黄熟し特有の芳香と辛味をもっています。
一方、しばしばごつごつした球状の果実もつきます。これは蕾の頃に産卵するマタタビバエやマタタビアブラムシによってできた虫癭で、これを乾燥したものを木天蓼(モクテンリョウ)[中国では木天蓼子(モクテンリョウシ)]といって生薬として薬用として用います。体を温める作用があり、腰痛、疝痛などの鎮痛に、また強壮薬や健胃薬としても利用されて来ました。果実のほかに茎・葉も同様の目的で利用されます。
成分としては、マタタビラクトンを含むイリドイド系のモノテルペノイド、アルカロイドのアクチニジン、そのほかβ-フェニルエチルアルコールやβ-シトステロールなどが知られています。
果実は熟すと生食できますが特有の刺激があります。生食以外では塩漬けやみそ漬けなど保存食にもできます。
正常な果実も虫癭になった果実も薬用酒として利用でき、冷え性、神経痛、リウマチ、腰痛、滋養強壮などに利用にできますが、薬効は虫癭になった果実(木天蓼)の方が高いとされます。
因みに、青果としてよく食べられるキウィフルーツ(A.chinensis)もマタタビと同属の中国原産の落葉性の低木です。