ホップはヨーロッパ東部~シベリア西部にかけて広く分布するつる性の多年草です。日本の中部以北の山地には変種のカラハナソウHumulus lupulus L. var. cordifolius (Miq.) Maxim. ex Franch. et Sav.が分布しています。ビールの原料として大変有名な植物です。ホップは雌雄異株で、ビール原料として利用するのは雌株のみです。
ホップは冬には地上部が枯れて地下部で越冬します。春になると芽を出して10m近くも伸びます。このため、ホップの栽培には高さ5mほどの棚を用います。6月ごろから葉腋に花序を伸ばして開花します。ホップの雌花は穂状花序となって垂れ下がります。はじめは雌しべだけが目立つので毛花(けばな)と呼ばれます。やがて苞が伸びてきて松かさ状になり、ビールの宣伝などで見られる毬花(きゅうか)となります。苞の内外の根元にルプリンlupulinと呼ばれる黄色の粒が分泌され、これがビールの苦味、香りの元となります。毬花は成熟初期に収穫されて乾燥、加工されます。日本のカラハナソウからもルプリンが得られるそうですが、品質が劣り利用されません。
当資料館のホップはこれまで、栽培場所の都合で高さ1.2mほどのフレームに巻きつけていましたがあまり開花しませんでした。今年は園のはずれにスペースができたので株分けして高さ3mの支柱に絡ませたところ、たくさんの花をつけました。大きな植物は自然のままに大きく育てるのが一番だという端的な例です。来年はもう少し見せやすい場所で展示できないか、思案中です。
ホップの毬花と苞に分泌されたルプリン