BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ホソバクサボタン(キンポウゲ科)

Clematis hexapetala Pall.

ホソバクサボタン

<生薬・威霊仙(イレイセン)の基原植物のひとつ>

観賞用として初夏に大輪の美しい花の見ることのできるテッセンやカザグルマなどが属するキンポウゲ科センニンソウ属(Clematis)の植物には、薬用として用いられるものもあります。
漢方で、鎮痛効果のためにいくつかの処方に配合される生薬・威霊仙(イレイセン)は、従来さまざまなセンニンソウ属の植物の根が生薬として用いられてきました。かつてはテッセンやカザグルマの根もその基原植物として利用されていました。
威霊仙は今では日本薬局方にも収載されていて、「サキシマボタンヅルClematis chinensis Osbeck、Clematis mandshurica Ruprecht又はClematis hexapetala Pallas (Ranunculaceae)の根及び根茎である」と規定されています。
今回取り上げたホソバクサボタン(C. hexapetala、別名イトクサボタン)はその基原植物のひとつで、中国の東北、華北、山東、朝鮮半島やシベリヤに分布して、草原や林縁に生える多年性草本植物です。
草丈は30~100cmほどになり、葉は対生し、羽状複葉で小葉は不均等に2~3裂します。葉腋から花序を伸ばして8月頃に写真のような直径2.5~4cmほどの白い花をつけます。白く見えるのは6片の萼で、花弁はありません。
根や茎は短い黄褐色の柱状で直立して、径1~2mm、長さ10~20cmほどの細い根がたくさん生えます。表面は黒褐色または褐色で細い縦の線が入っています。
成分としては、根にはアネモニン、プロトアネモニンやサポニンなど、葉にはクマリンやフラボノイド類、精油や樹脂などが含まれることがわかっています。
生薬・威霊仙としては抗菌、高圧、血糖降下作用などの作用が知られていますが、漢方では疎経活血湯や二朮湯などの処方に配合されて、神経痛、痛風、筋肉痛や関節リウマチ、関節痛などの関節障害に用いられます。