BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ホシアザミ(キキョウ科)

Hippobroma longiflora (L.) G.Don

ホシアザミ


植物の話あれこれ 33
希望の星「ホシアザミ」

昨年の夏、当館の門から本館に至るメイン通路沿いの一角に、この植物が数株植えられた。白い星形の美しい花が多数咲き、道を通る者を楽しませてくれた。初めは観賞用の植物と思い、あまり気にとめなかった。しかし花期が長く、毎日通路を通るたびに、この純白の清楚な花が、私を迎えてくれた。このことにより、すっかり馴染みになり、この植物に強い興味をいだくようになった。そして調べてみると、なんと猛毒成分が含まれていると記載されていた。

学名(属名)”Hippobroma”はギリシャ語の”hippos”(馬)と”bromos”(激しさ)に由来するといわれている。この植物に馬をも狂わすほどの強い毒が含まれていることによるものとのことである。

種名”longiflora”(長い形の花の)は、この植物の細くて長い筒をもつトランペット状の花の形を表している。

なお、同種異名(Synonyms)として、Isotoma longlflora (L.) K. Preslや、Laurentia longlflora (L.)Endl.が記載されている。

和名の「ホシアザミ」は、花が星形であることと、葉の形や草の姿が「アザミ」に似ていることに因んで名づけられたのだと思う。

この植物は英名で”Star of Bethlehem”(ベツレヘムの星)と呼ばれている。 この名の由来は解らない。しかし、キリスト教徒にとっては、特別な思いを抱かせる名前である。「ベツレヘムの星」は、救い主イエス・キリストの誕生を、告げ報せた星である。すなわち、暗黒(罪)から救いへと導く「希望の星」なのである。この植物は、このような大切な名を与えられ、なんと光栄なことであろうか。 恐らく、人々に危害を与えるのではなく、希望を与えるために誕生した植物であると思う。今は解らないが、将来不治の病を治す特効薬として利用されるようになるのかもしれない。

「ホシアザミ」は、西インド諸島原産の多年草で、世界の熱帯に帰化雑草として広がっている。有毒植物で、植物中に含まれている白い汁液が1滴目についただけで失明するといわれている。また、これが皮膚につくと炎症を起こす。口に入れると、口の中がやけど(火傷)をしたようにヒリヒリする。心臓や神経系に作用するロベラニディン(Loberanidine)やロベリン(Lobeline)といったアルカロイドが含まれている。

この植物の茎は高さ50cm程で、ふつう分岐しない。多数の葉を互生する。葉は単葉で抜針形または倒披針形で深く鋭い鋸歯がある。ほとんど無柄である。花は茎の上部に、ほぼ直立してつき、萼片が5個ある。花筒は長さ6~10cm、径6mm以下の円錐形である。花冠の裂片は5個で、ほば同形で、長さ約2cmの披針形である。

中南米の各地で、この植物や、その葉を薬用として利用している。すなわち、葉を下剤として用いたり、植物体を煎じて、ぜん息や気管支炎、風邪などの治療薬として用いられる。また、性病、リウマチ、てんかん、狂犬病などの治療にも用いられる。また外用薬として怪我などの外傷に対する塗り薬としても使われている。

(「プランタ」研成社発行より)