BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ハマジンチョウ(ゴマノハグサ科)

Pentacoelium bontioides Siebold et Zucc.

ハマジンチョウ

ハマジンチョウは日本の本州(志摩半島)、九州、琉球から台湾、中国南部、ベトナム北部に分布する低木です。名前の通り、海岸の砂浜や岩地などの湿地に生息します。従来ハマジンチョウはハマジンチョウ科(Myoporaceae)のハマジンチョウ属(Myoporum)として、Myoporum bontioides (Siebold et Zucc.) A.Grayの学名で知られていました。近年の分類研究が進んだことにより、ハマジンチョウ科はゴマノハグサ科に含まれることになりました。また、ハマジンチョウとコハマジンチョウ(Myoporum boninense Koidz.)も「分子系統解析と形態的根拠(新版日本の野生植物)」により別属となり、ハマジンチョウの学名はシーボルトとツッカリーニが最初に記載したPentacoelium bontioides Siebold et Zucc.に戻されました。新しいハマジンチョウ属(Pentacoelium)はハマジンチョウのみの単型属です。一方、Myoporum属はハマジンチョウが含まれなくなってしまいましたので、コハマジンチョウ属という和名に変更されました。

ハマジンチョウは名前の通りジンチョウゲによく似た、光沢があり肉厚で楕円形の葉を持ちます。葉は枝の先端近くに付きます。葉腋に数個の花を束生します。花冠は漏斗状で直径は2~3cmほどです。花冠は5裂します。よく見ると上の2つは下の3つよりも多少小さい左右相称です。雄しべは4個です。ぱっと見ると5つあるようですが、1つは雌しべであることがわかります。花冠内側の紫色と斑点は個体差があり、当館裁植のように紫色に紫色の斑点があるもの、斑点がなく紫1色のもの、ほとんど白色で紫色の斑点があるものと様々です。

ハマジンチョウは日本~ベトナムと広く分布していますが、日本では生息地の海岸の環境悪化から個体数を減少させており、環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)に指定されています。生息地である三重県、長崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県でも個別に絶滅危惧IないしII類に指定し保護されています。