ハナシュクシャは東南アジアが原産で広く分布、栽培される多年草です。熱帯アメリカにも野生化しており、キューバでは国花とされています。日本には、江戸時代末期に渡来しました。耐寒性が強く暖地では露地で越冬することから、当資料館近隣の庭や畑の片隅などでも目にする植物です。ハナシュクシャを単に「シュクシャ(縮砂)」と呼ぶこともあります。漢方薬などの生薬業界では「縮砂」とはインド~東南アジアに分布するAmomum xanthioides Wall. ex Baker (Amomum villosum Lour. var. xanthioides (Wall. ex Baker) T.L.Wu et S.J.Chen)の植物そのもの、および薬である本種の果実を指しますから、誤解のもとです。やはりハナシュクシャと呼ぶのが適当でしょう。
ハナシュクシャは熱帯では周年開花しますが、日本では8月終わりから11月ごろに開花します。直径7、8cmの比較的大きな白色の花です。花の形はショウガ科に特有なものですが、唇弁が上についた上下さかさまとなっています。すなわち、花の外側から、上に2枚と下に1枚ある細長いのが花弁です。上向きで大きく先端が二つに割れ、中央に黄緑色の斑があるのが2つの仮雄ずいが合着した唇弁です。左右下側に広がる白色幅広のものはそれぞれ仮雄ずいです。花粉をつけた雄ずい2つは合着して筒状になり、中に雌ずいが通ります。花には大変良い香りがあります。
ハナシュクシャの根茎はショウガのような形をしていて精油を含みます。中国南部では根茎を痛み止めなどに用います。マレー地域では根茎をすりおろしたものや茎の根元をくだいたものでうがいをしたり腫れ物の治療に用いたりします。またマレー地域の20世紀初頭の記録では、悪霊や「langsuyar」と呼ばれる生霊の一種に対抗するために根茎をつぶしたものを体に塗布したり、お祓いに用いたりしたということです。