BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ソゴウコウノキ(マンサク科)

Liquidambar orientalis Mill.

ソゴウコウノキ

<樹幹を傷つけて生じた樹脂を蘇合香(ソゴウコウ)と呼んで香料として利用できる。>

ソゴウコウノキLiquidambar orientalis はマンサク科(Hamamelidaceae)に属する、小アジア南西部を原産とする落葉高木ですが、日本でも知られる高木のフウ(L.formosana)と同じ属になります。
葉は互生して長い葉柄を持ち、掌状に5裂します。まれに3~7裂するものもあって、葉の縁には鋸歯をもっています。雌雄同株で、花は単で、春に同じ株に咲きます。花の写真では、右上が雄花を示していますが、さらに総状につくようになります。写真の下方の2花は雌花で、単性で垂れ下がり、秋には鞠状の果実をつけます。
初夏に樹幹に傷をつけると、香りのよい粘性のある樹脂状分泌物(バルサム)が樹皮に貯まります。秋に樹皮ごと採取してこの流動性のある香脂を搾りますが、これをソゴウコウ(蘇合香)と呼んで、調合香料として利用します。かつては、蘇合香は気管支カタルに内服したり、疥癬薬として外用したりして薬用として利用された樹脂の一つです。主産地はトルコ南部で、中国広西では栽培されているようです。
成分としては、スチレシノールとそのケイヒ酸エステル、ケイヒ酸、スチラシンなどが主で、スチレン、バニリンなどの精油成分などを含んでいます。
同属のフウにも似たような香りがあり、フウから取れる樹脂をフウコウシ(楓香脂)と呼んで解毒や止痛、止血などの薬用に用いられました。
ちなみに、属名のLiquidambarは、「液状の琥珀」を意味して、樹幹から染み出して得られた樹脂も英語でこの名称で呼ばれています。ラテン語のliquidus(=liquid 液体)とアラビア語のanbar(=amber 琥珀)の合成語とされています。