BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

セイヨウハマナツメ(クロウメモドキ科)

Paliurus spina-christi Mill.

セイヨウハマナツメ

<キリストの「茨の冠」とされる植物>

クロウメモドキ科ハマナツメ属(Paliurus)は、欧州からアジアに分布する6~8種から構成される、落葉樹です。

なかでもセイヨウハマナツメ(P.spina-christi)は、地中海からバルカン半島、イラン、ヒマラヤ、中国におよぶ広い範囲に分布し、高さ数mになる落葉低木です。

葉は互生し、卵形で長さ3~5cm程度、明瞭な三筋の葉脈があります。初夏に葉腋から集散花序を出し、写真のようなうす黄色の小さい花をたくさんつけます。秋には写真のような変わった形の核果をつけます。円盤状で直径は2~3cm程度、周囲は薄いコルク質の翅をもっています。

ハマナツメ属の植物はたいていトゲを持っていますが、セイヨウハマナツメも托葉の変化した2本一対のトゲを持っています。一対のうち一方は長くまっすぐで上に少し曲がり、片方は比較的短く先端は下を向き鉤状なるのが特徴です。

このトゲのためか、伝説によると、キリストが処刑された際に頭に載せられた”茨の冠”はこの植物を編んで作られたものだった、といわれ、”聖書の植物”の一つとして知られています。学名の小種名のspina(トゲ)-christi(キリスト)もこの伝説から採られています。

ハマナツメ属は、日本にはナツメの葉によく似た葉をつけることから名づけられたハマナツメ(P.ramosissimus)1種だけが分布しています。