クラムヨモギは中央アジアから西アジアの乾燥地帯に広く分布する半潅木状の多年草です。クラムヨモギはミブヨモギやシナヨモギ(Artemisia cina Berg ex Poljak.)と同じヨモギ属のミブヨモギ節(Section Seriphidium)ですが、この節を属に昇格させて学名をSeriphidium kurramense (Qazilb.) Y. R. Lingとする見解もあります。
クラムヨモギの葉はミブヨモギに似て深い切れ込みがありますが、花期には枯れてほとんど無くなり花序だけになります。一つの頭状花は長さ3~4mm、直径1mmくらいと非常に小さく、中には小花が4から5個着いています。1つの小花は長さ1mmくらいで、雌しべが1個、雄しべが4~5個あります。
クラムヨモギは、ミブヨモギに次いで弊社が導入したサントニン含有植物です。クラムヨモギは1947年にパキスタン・ペシャワール大学のカジルバッシュ教授(Dr. N. A. Qazilbash) によって同国西北辺境地帯のクラム峡谷で発見されました。和名も発見地に因みます。弊社は1950年にカジルバッシュ教授から種子を入手し、新品種育成とサントニン生産栽培に着手しました。ミブヨモギが主に北海道や東北、中部地方の寒冷地で栽培されたのに比べ、クラムヨモギは香川県や兵庫県の小豆島と淡路島、和歌山県西部などの暖かい地域での栽培に適し、最盛期(1962年)には年間230トンの収量をあげました。新品種育成では、コルヒチンを用いた四倍体が作り出され、クラムヨモギ四倍体とミブヨモギとの交雑により高サントニン含有植物「ペンタヨモギ」、「ヘキサヨモギ」が作出されました。ペンタヨモギ、ヘキサヨモギは日本における植物特許の第1号として知られています。