ガレガソウは小アジアからヨーロッパの湿地や低地に分布する多年草です。イギリスにも帰化していて、英名は Goat’s Rue 、別名 French Lilac ともいいます。花序には桃色の花がつき、白花の品種もあります。古くから牧草や薬草として利用されていましたが、現在では鑑賞用として植えられることも多いようです。
この植物の種形容語の officinalis は薬草を意味しますが、かつて疫病、熱病、感染症の治療薬としてペストの治療にも用いられました。ドイツでは Pestilenzkraut (疫病草)とよばれたことがありました。この植物は飼料用に広く栽培されていて、この植物を食べた牛の乳生産量は大きく増加することが知られており、人にも同じ効果があるとされています。属名の Galega は gal (乳)と agoag (促進する)を意味します。薬草としては花が咲き始めるころに地上部を刈り取り乾燥させて利用します。
また、ガレガソウには血糖値降下作用があるといわれ、初期の糖尿病の薬としても利用されてきました。これはガレガソウに含まれるグアニジン( Guanidine )によるものですが、このままでは副作用が強いため、これをもとに塩酸メトフォルミンなどのビグアナイド系薬剤が合成されました。現在ではインシュリン非依存型の糖尿病治療薬として世界中で利用されています。
当館ではガレガソウの種子を春に播きました。いくつかの系統で試してみたのですが、培養土に直接播種すると発芽自体は 2 日ほどでしますが、発芽率は非常に悪く、数十の種子を播いても 2 - 3 つぐらいしか発芽しません。発芽には何か「こつ」があるのかもしれません。ガレガソウは日当たりがよく、水はけのよい湿った土壌を好みます。種子を播いた年の晩夏には花が咲きます。