BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

カリン(バラ科)

Pseudocydonia sinensis (Thouin) C.K.Schneid.

カリン

<乾燥果実は生薬モッカ(木瓜)となり薬用にも利用される。>

晩秋に黄色く熟して良い香りを放つ、小型のラグビーボールのような果実のなるカリンは、果実酒にすると咳止めや疲労回復に良いとされるので、ご家庭で作られている方も多いと思います。
このカリン(Pseudocydonia sinensis)は、中国原産の落葉高木で、冷涼地を好み耐寒性があり、日本では中部・東北地方、中国、朝鮮半島、ひいてはアメリカやフランスなどでも栽培されています。
ボケと同属の植物ですが、樹高は8mほどにもなり、樹皮は緑褐色で、鱗状にはげ落ちてまだらに見えるのが特徴です。葉は互生して柄を持ち、長さ5~10cmほどの楕円形あるいは倒卵形、縁にこまかい鋸歯を持っています。
4月から5月にかけて、直径3cmほどの淡紅色の美しい花を枝先にたくさんつけるので、観賞用に庭園樹として育てられている方もあるかもしれません。
果実は倒卵形で重さ300~500g(長さ10~15cm)ほどになりますが、硬くて渋みがありそのまま生食にはできません。しかしペクチン質を多く含んで、ジャムや砂糖漬けにして食べることができます。近年は果実酒としてカリン酒が愛飲されています。
成分としては、リンゴ酸、クエン酸や酒石酸などの有機酸、ショ糖、タンニン、サポニンなどを含むことが知られています。
また果実の乾燥物は生薬として薬用にも利用され、日本薬局方外生薬規格には、ボケの果実と並んで生薬モッカ(木瓜)の基原植物とされています。漢方処方に配合されて、鎮痙、鎮咳、整腸、利水薬などとして利用されています。
またカリンは中国ではメイサ(榠樝)の名称を持ち、果実には「痰を消す、風湿を去る」などの効用があるとされています。