BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

カギカズラ(アカネ科)

Uncaria rhynchophylla (Miq.) Miq.

カギカズラ

カギカズラは日本(本州房総半島以南)、中国の中南部に分布する常緑藤本です。名前の通り葉脇にカギ(とげ)がありますが、これは枝が変化したものです。またこのカギは向かい合わせに2個、次の葉腋に1個、その次の葉腋には2個と、2、1、2、1と繰り返すことが知られています。時には2、2、2、と2個が連続することがあります。この2個連続する枝が出現するかどうかは個体差があるようで、当館のカギカズラは少ないですが、各地の薬用植物園をお邪魔した際に観察すると2個連続する枝がたくさんある個体もありました。このカギ(とげ)を含む枝を生薬「チョウトウコウ(釣藤鈎)」と呼び、鎮静、鎮痙や血圧降下、精神不安や苛立ちを抑えるのに用います。

カギカズラの花は新しい枝の葉腋にカギの代わりに出てきます。頭状花序は球形になります。花序の直径はおよそ2cm、花冠は緑白色または淡黄色です。花期は1週間程度と短いため、植物園従業員のように毎日見られる環境でなければタイミングよく観察するのは難しい植物です(2025年は6月中旬に開花したので掲載時点は花は見られません)。

当館には従来から育てていたカギカズラと、数年前から栽培を始めた株の2系統があります。昨年から新しい系統のカギカズラも開花するようになりました。従来のカギカズラは花弁先端が淡黄色で花筒は赤いため、黄色と赤色のコントラストが非常に美しいです。一方、新しい系統のカギカズラは花筒部が赤くないため淡黄色~緑白色のシンプルな姿です。仮に前者を赤いカギカズラ、後者を白いカギカズラと呼ぶと、白いカギカズラは珍しい個体なのかどうか気になります。

しかし図鑑で調べると、新旧の『日本の野生植物』には花筒部の色について言及がありません。『樹木大図説』も「花冠は細筒形,外面無毛,白緑色乃至帯黄色」とあり花筒部ははっきりしません。ところがインターネットの画像検索を使用すると、赤いカギカズラだけでなく白いカギカズラも表示されます。赤と白のどちらが少数派なのかは未だはっきりしませんが、白いカギカズラは珍しいわけではないようです。

花筒が白いカギカズラ

花筒が白いカギカズラ

花筒が赤いカギカズラ

花筒が赤いカギカズラ