BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

オキナワウラジロガシ(ブナ科)

Quercus miyagii Koidz.

オキナワウラジロガシ

オキナワウラジロガシは日本の固有種で、奄美大島、徳之島、沖縄島、久米島、石垣島、西表島に分布する常緑高木です。名前の良く似たウラジロガシ Q. salicina Blume は日本の宮城県以南から台湾まで分布するので、オキナワウラジロガシとウラジロガシは分布域が重なります。両種の果実(どんぐり)を比べれば一目瞭然ですが、成熟した枝葉だけでは非常に見分けにくいものです。徳之島には両種の雑種 Q. miyagii × Q. salicina が見出されています。

オキナワウラジロガシは雌雄異花同株で雄花序は新梢の脇と元に近い葉腋に、雌花序は新梢の中位から先端近くの葉腋につきます。オキナワウラジロガシのどんぐりは日本で最も大きなことで有名です。径2~3cmになります。他の大きなどんぐりと比べると、直径だけならクヌギと、長さだけならマテバシイも負けませんが、直径、長さともに大きいのはオキナワウラジロガシです。オキナワウラジロガシのどんぐりはウラジロガシと同様に翌年結実します。すなわち、春に雌花が咲いた後、シラカシやアラカシの様に同年の秋に成熟するのではなく、1年後の秋に成熟します。

オキナワウラジロガシは亜熱帯に分布しますが、意外にも京都の山科植物資料館で露地栽培することができます。2008年頃に高さ1mの苗を植えて現在、高さ10mほどに成長しています。萌芽が12~1月に起こるため、新梢は全て寒さで枯れてしまいますが再度4月頃に萌芽して、2度目の新梢は枯れないため毎年大きく育つことができるのです。

ところが近年の温暖化で真冬の新梢が枯れないことが起こるようになりました。そうすると、萌芽に続いて出現する花序も枯れないことがあるのです。2020年に初めて、花序が出現しましたが、この時は2月の数回の寒波で枯れてしまい、開花しませんでした。

2度目の花序出現になる今回は2月にほとんど積雪がなく、3月を迎えようとしています。おそらくこのまま開花するのではないかと期待しています。また開花したら次は結実を期待したくなります。蕾出現からどんぐりが成熟するまで2年弱、2回の冬を越えないといけないのでハードルは高そうですが、年々暖かくなるうちにいつかはどんぐりが実るかもしれません。

参考文献
五百川裕.2016.ブナ科 FAGACEAE.改訂新版日本の野生植物3:大橋広好 他(編).pp. 94-99,平凡社,東京.

左から、クヌギ、マテバシイ、オキナワウラジロガシの果実(どんぐり)
オキナワウラジロガシの雄花序(赤色)と雌花序(橙色)